埼玉県さいたま市大宮区、JR大宮駅東口前に、一つの地下道が取り残されている。

「大門地下道」だ。駅からまっすぐと伸びた大通りの歩道に、ぽつんと存在している。右は県道、左は商店街。すぐ先には県道と旧中山道の交差点がある。
駅からの距離は約150m。人通りの多い中心地である。

1963年(昭和38年)8月15日、終戦からちょうど18年目の年に竣工となった大門地下道。長さは約70m、幅約3.5m。交差点の下を安全に通れる地下道であると同時に、ショッピングも楽しめる地下街でもあった。

かつては大いに賑わっていた地下街も、現在はほぼ全てのお店がシャッターを下ろし、物置状態となっている。

交差点真下の地下道部分はしっかりと管理されており、落書きもゴミもなかったが、利用者はほとんどいない。
今でこそ廃墟のように虚ろな姿となってしまった大門地下道だが、完成当時は「大宮の新しい時代」を予感させる象徴のひとつだった。大門地下道が作られる3年前、1960年(昭和35年)8月13日、この一帯は大火事に見舞われた。関東屈指の巨大ターミナルである大宮駅を中心に、鉄道の街として栄えていた繁華街が壊滅状態となったのだ。
これをきっかけに駅前の大規模再開発が始まり、1962年に「大一デパート」が完成。その翌年、デパートから旧中山道交差点にかけての地下に作られたのがこの大門地下道である。

↑1967年(昭和42年)の大宮駅東口前の様子。中央左、コカコーラの看板のある建物が大一デパート。
(画像引用:さいたま市アーカイブズセンター「旧大宮市域 昭和42年 大宮駅東口駅前 中央通り」)
総工費は3億1000万円。15軒の商店とテナントが入り、メディアでは「今後の商店のあり方を示すモデル商店街」と紹介された。
それからすぐ後、1966年には「大宮中央デパート」が開業。屋上にはミニ観覧車などの遊園地を備えていた。1967年には大宮駅に大宮ステーションビル(現・大宮ルミネ)が完成、1969年には西武百貨店、1970年に高島屋が完成。デパート間での競争は激化し、大一デパートは客足を維持できずテナントビルへと変わったのだ。

現在、地下街で唯一営業しているのは眼鏡店「メガネのオガワ」。地上の地下道入口前と、地下街のそれぞれで営業している。
地下道の入口は「メガネのオガワ」の営業時間に合わせてスタッフの方によって開閉されているらしく、実質的に地下道は「メガネのオガワ」の入口として使われているのが現状のようだ。

よく見ると、壁には古めかしいステッカー。排水ポンプの制御盤には、今は無き「大宮市」の文字も見つけられた。

地下道を通り、交差点の先へ出てきた。信号の奥、写真右に写っているのが、旧・大一デパートのテナントビルだ。
この出入り口のすぐ近くにあった大宮中央デパートは2017年に取り壊され、複合商業施設「大宮門街」として生まれ変わった。
街が移り変わってゆくなかで、旧・大一デパートと大門地下道は今もひっそりと時代の狭間を彷徨い続けている。
参考資料:
https://www.city.saitama.lg.jp/001/010/015/004/006/006/p034778.html
https://www.eizou.pref.saitama.lg.jp/library/OnVif11
https://www.sankei.com/article/20221120-WLCUICONVJLKRKCW2G2VO7GB4Q/
https://www.city.saitama.lg.jp/archivescenter/001/002/002/kpo-0115hoka.html
https://smtrc.jp/town-archives/city/omiya/p06.html
https://saitama.bss-net.jp/archives/30000180829002/HTML5/pc.html#/page/14
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/b48b95c982ed539ad0e2b3e158d8822b1b8ae921
